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オトコ エスエフ クリュセの魚 ニッポン オタク 人生。


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http://www.amazon.co.jp/dp/4309622216/ref=cm_sw_r_fa_dp_at.gsb0TFWKZV

極めて「男・SF・オタク的」な感性、舞台、ガジェット、オマージュを総動員して緻密に編み上げられた、衝撃的なまでにロマンチックな恋愛小説である。
作者の東氏は「発表するのが小説となると読まれるのが恥ずかしい」というようにつぶやいておられたが…
いや、確かにこれは「恥ずかしい」のかもしれない!(笑)

どう恥ずかしいかというと、ぼくらは'80年代(もっと前か?)からこっち、ずっーと「男SFオタク」であって、それは『物語を語る際に、すぐにロケットを持ち出したがるのが男』などと揶揄されて、男SFオタクであるぼくらはそれを静かに認めるのが常であったわけですが。(恥ずかしいってのは、ここらへんの意識に由来しているんじゃないかと思う)
それを真正面から臆面も無く「オレ様の好きなモノ、気になるモノ総出で恋愛物語を紡ぐ」総力戦をやってくれちゃっているのである。すがすがしいほどに「男・SF・オタク」のパーツで組み上げられているのである。

だがしかし、本作を「男オタクが喜ぶSF」などと受け取るのは、スペンサーシリーズを「男根主義」と、あるいは「宇宙の戦士」を「右翼小説」などとごく簡単に読んでしまう「極めて粗暴な読み方」であることは、皆さん既に充分お判りのことと思う。

本作は人はどこまで人を愛することができるのか、人間とは何物か、何物であり得るのか、といったようなテーマをSFの語り口でしか成し得ない深みにまで導く、純然たる恋愛小説、文学作品である。
男でもなくSF好きでもなくオタクですらない人にも…下は中学生から、是非読んで欲しい物語である。
本作はそう長くない中編小説だが、大きな「文学という宇宙」へと接続する優れたゲートウェイともなっている。

だからぼくは東氏には胸を張ってこう言っていただきたい。
「男SFオタクじゃなきゃ使えないガジェットで恋愛文学が表現可能なことを証明したぞ」。
まぁ、“作法”に反すると思うので、そうは言わないと思うけど。(笑)




最後に。
ネタバレを回避したいのであまり詳しくは書かないが、主人公の境遇が私と妙に符合するところが多くあり、物語のそこかしこで度々胸のつまる思いをさせられた。その点でも、私にとって本作は極めてロマンチックなのである。
みんな、知的に泣け。